「ニャー!!」
(今日こそは……!)
決意も新たに直江が手にしたのは、赤いリボンのついた猫じゃらし。
ひとつ屋根の下で暮らし始めて一ヶ月余り……。
気高く気まぐれな猫の高耶さんは鋭い爪で武装して、なかなかお近づきになれない。
直江としては一目惚れした高耶さんと仲良くなり、一緒にお昼寝をしたりして甘えて欲しいところなのだが……。企てた作戦はことごとく敗れ去って今日に至る。
(今日こそはこれで高耶さんの気持ちを惹きつけたい……!)
日向で気持ちよさそうに転がっている高耶さんにそっと近づいてゆく。ひたひたと足音を忍ばせて傍に寄ると、半径一メートルのところまでも行かないうちに高耶の耳がぴくりと反応した。そして、むくりと首をもたげて直江の方を見る。
「……なんだよ。アッチ行ってろよ」
冷たい言葉にもめげず、直江は更に近づいて高耶の首筋から顔の前にかけて、猫じゃらしを動かした。
「!!」
ぴくん、と高耶の耳がはねる。
そわそわと手足が動くが、必死に堪えて猫じゃらしから視線を外す。しかし、直江もめげずに猫じゃらしを振り、高耶の気持ちを誘うように近づけたり遠ざけたりしてみる。
(くそ〜〜〜。遊びたい〜〜)
でも、犬なんかと仲良くするなんて、猫としてのプライドが許さない!
直江がなんとか高耶の気持ちを引こうとしているのは知っていた。
大きな、凛々しい犬なのに必死になって高耶にかまうのが面白くて、いつも適当にからかっていたのだ。
……でも、いつからだろう? 高耶も、直江のことが気になってしかたなくなったのは。
あのふかふかの大きな体の傍で眠ったら、どんなに気持ちがいいだろう。
直江と遊びたい。
直江の、綺麗な鳶色の瞳にずっと見つめられたい。
けれど、今更どういう顔をして直江の傍に行けるだろう。
あんなにいっぱいからかったのに。
冷たくしたり、爪でひっかいたりしたのに。
そんな思いが高耶を頑なにさせていた。
……しかし、それよりも強い猫としての性が、高耶の躰を動かそうとしていた。
(う〜〜〜。もうダメだ〜〜! ええい! どうにでもなれ〜〜〜!)
決めた瞬間、がばっと起きあがって猫じゃらしを見る。そして、その先にいる直江を。
「にゃー!!」
猫じゃらしに飛びかかるフリをして、直江の肩に飛び乗った。
「……ッ!」
直江が驚いて目を見開く。でも、すぐに優しい目の色になって高耶を抱きしめた。
「高耶さん。大好きです」
「……にゃー……。オレも。……直江、好き」
END
あまりのかわいらしさに触発されて、プチノベルなどをつけてしまいました。 即興で一時間……。我ながら早い……。 いや〜〜ん。やっぱり猫な高耶さんは萌えです〜〜〜。 皆様、早崎さんのイラストを堪能されるついでで構いませんので、読んでやってくださいませ〜。 |