落ち葉焚き…?


Written by とらこ  


 広い庭に茂る木々。季節が秋に移り変わると、夏の間は青々としていた葉が次第に赤く色づいてくる。風が吹く度にふわり、ふわり、と地面に落ちるそれはいつしか降り積もり、今日直江はちょっとした暇を見てそれを掃き集めていた。
 しばらくすると目の前に落ち葉の小山が出来上がる。それを見て満足そうに息をついた時だった。
「にゃっ!」
 ばさっと乾いた音をたてて、その小山の真ん中に毛玉の塊が飛び込んだのは。
「たっ、高耶さん!?」
 落ち葉の中に埋もれてそれを思うまま掻き回して遊び始めたのは、さっきまで縁側で居眠りしていた子猫。
 黒い大きな瞳を好奇心に輝かせて、自分の動きに合わせてかさこそと音を立てる落ち葉を追い回している。当然のことながら集めた落ち葉はまたしても散らばり、直江の苦労は一瞬にして水泡に帰した。
「もう、駄目じゃないですか。こんないたずらをしちゃ」
「にゃあ?」
 直江の言葉がわかっているのか、いないのか、こちらを見上げて高耶は小首を傾げる。
 その仕草と、一心不乱に落ち葉と戯れる姿があまりに愛らしくて直江は一瞬毒気を抜かれそうになるが、はっと気を取り直して軽く高耶を睨む。
「めっ、ですよ。高耶さん」
「にゃ?」
 直江、何怒ってるの?
 そんな言葉を思わせる目でまた首を傾げる高耶を、そっと落ち葉の中から抱き上げた。
「縁側で大人しくしていてください。後でゆっくり遊んであげますから」
「にゃあ〜?」
 ホントに?
 このところ仕事で忙しかった直江は、あまり高耶と遊んでくれなかった。今日は久しぶりのお休みなのに、高耶を放って庭掃除なんかしていたからなんだか邪魔したかったのだ。でも、枯れ葉の音やふわふわした様子が楽しくて、つい本当の目的を忘れてしまった高耶だった。
 直江の言葉ではっとそれを思い出したが、まだ疑っているかのような声で鳴く。
「ほんとです。だから、もうちょっと待っていてくださいね」
「にゃあぁ!」
 わかったよ!
 高耶は嬉しそうに鳴くとそっと降ろされた縁側の座布団の上に座った。それからは時折毛繕いをしながら、直江の庭掃除が終わるのをじぃっと待っていた。
「にゃああ!」
 まだぁ?
 ものの一分もしないうちに、高耶が催促するように鳴いた。
「もう少しだけ」
「……にゃ〜」
 も〜。
 ほんの僅かな時間が、高耶にはとても長く感じられる。それに直江が動かす箒に合わせて動く落ち葉が、またしても高耶の好奇心を強く惹きつけていく……。
「にゃあああ!」
「う、わっ!」
 飛びつくような勢いで、高耶が直江の持つ箒にじゃれつく。とっさに取り落としてしまったそれがせっかく集めた小山の上に落ちかかり、ばさばさと枯れ葉を舞い上げる。それが楽しくて、高耶もぴょんぴょんと飛び上がって駆け回った。
「高耶さんっ!」
 直江の声が空しく響く……。
 秋の庭での、ちょっとした出来事……。 

END  


 夏弥さんからの頂き物を見て、あまりの可愛らしさに触発されてこんなプチノベルを書いてしまいました〜。イラストのイメージを壊さないといいんですが……(どきどき)
 私は夏弥さんの描かれるにゃんこな高耶さんがそれはも〜〜〜大好きで! イラストをいただけると言われた瞬間、にゃんこにしようと心に決めました(笑)そして、考えた末に季節は秋!ということで「せっかくお掃除して集めた枯葉にじゃれてまた散らかしてしまい、直江に「めっ!」と怒られてるにゃんこな高耶さん」をお願いしたのです。
 夏弥さん。色々と大変な時に厚かましいリクをお願いしてしまって申し訳ありませんでした! でも、こうしていただけたのはやっぱりすごく嬉しいです!
皆様、夏弥さんのイラストを堪能されるついでにお目汚しに読んでやってくださいな。


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